SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
……はあ。
変に続くソワソワ感。
さっき玉ちゃんと話してから、それはさらに強まった。
疲れと寝不足でグッタリなのに、心はちっとも落ち着かない。
気を紛らわせる為に立ったり座ったり、飛んだり跳ねたり……
「……んん!」
お兄さんたちと睨めっこしたり、
「久しぶり」
剥製の熊にまたがったり、
「——もしもし黒木? うん平気。今? 友達の家。 えっと、黒光りした友達。カブトムシとクワガタみたいな」
途中、何度か電話に出たり……
「「「「……っっ……」」」」
「「……っ、 ……美空っ!!」」
やれやれと柳と小暮が寄って来る。
「あっちにチョコあるぞ!」
「たこ焼きも焼いてやるぞ!」
あたしを部屋の隅へと連れて行った。
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「どうした。今日はやけに落ち着かないな」
凌駕が声をかけてくる。
その後、大広間では食事会が始まっていた。
玉ちゃん、凌駕、幹部たちが座るテーブルにあたしも一緒に座ってる。
「うん。ちょっと気になる事があるんだ」
「気になる事?」
「何が気になるのだ?」
玉ちゃんと凌駕がピクッと眉を動かした。
「さっきの、玉ちゃんの言った言葉。お友達はけしてお前を裏切らんぞってやつ」
「……あん?」
「それがどうした」
「もし、裏切ったらどうなるの?」
「……ああん?」
「どういう、ことだ」
「今日、奏太がそんな話をしてたんだ。あたし、なんか引っかかって……」
「「……??」」
「どんどん心が重いんだ。奏太、笑ってたけど覚悟がすごくて……」
「「……??」」
「あたし、ヤクザの世界分からないし、甘くないんだって。二人は知ってる? ヤクザの世界」
「「…………」」
二人はポカンとあたしを見つめた。