SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「「……ブッ……!」」
吹き出す柳と小暮のあと、
「……美空。ワシらもどっぷりヤクザなんだが……」
「……まさにここがヤクザの世界だ……」
二人はぼーっとあたしに答える。
……?
「あ〜、そういえばそうか」
「「「……ンン、オッホン!」」」
幹部たちがふわふわ視線を泳がせた。
「……それで、ヤクザがどうした」
「どれ、もう一度ちゃんと言うてみい」
「……うん。それが、奏太が言ってたんだ。知り合い、裏切るとかなんとか」
「……?」
「……奏太?」
「月島奏太。ほら、凌駕話したやつ、扇龍の総長」
「……ああ、あの少年か」
「ふむ。そやつなら前々から噂は耳に入っていた。ずいぶん腕の立つ男だと」
「……うん」
「確か後に大熊へ行くという話を聞いたが」
「どうせ知り合いのコネなのだろう。それがなければウチが面倒見ていたものを。それで、その男がどうしたのだ?」
「ケジメつけるって言ったんだ」
「「……ケジメ?」」
「あたしのESP勝手に喋った。そしたら奏太がヤクザの世界甘くない。でもちゃんとケジメつけてくるって」
「「…………」」
「ねえ、ケジメつけるって、どういう事?」
あたしはじっと二人を見つめた。
「……それはどうやらヤクザにはならないというケジメのようだな」
「うむ。一度受けた申し出を断ると……」
「……?」
「しかし、まだ正式な組員ではないだろう」
「なにか特別な義理があるというなら別だが、そうでないなら大熊とて話が分からん相手ではないはずだ」