SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

……?


「義理はあるって言ってた」


「「……?」」


「よく分からないけど、あたしもESPで分かった。扇龍にいた時、大熊のやつが来てて、奏太、何か大きな恩、感じてた」


「「…………」」


「幹部の娘とも付き合いあるって。そういえばあたし視たんだ。背中の赤い女。二人ハダカでなんかやってた」


「「…………」」


二人は顔を曇らせる。


「……そうか。そういう事なら話は別だな」

「そのケジメ、そやつにとっては相当覚悟のいる事だろう」


声を抑えてあたしに言った。


「……どういうこと?」


「制裁は免れないという事だ」

「まあ、昔のように指詰めまではせんだろうが……」


「制裁って?」


「取り決めに背いた罰として、その者に科せられる報いの事だ」


「……?」



「分かりやすく言うとだな、この場合、そやつは肉体的苦痛を与えられる事になる。

自分はけして手を出す事は許されず、ただ黙って暴行を受け続けるのだ。

恩義の、その相手の気が済むまでな……」


「それがケジメをつけるという事だ」


どこか冷たい眼差し……

険しい顔で二人は喋った。


「……そんな……」


「「…………」」


「……だめだ。奏太は仲間で友達なんだ。だから……」


「美空よ。こればかりはワシらでもどうしようもない」

「組には組のしきたりというものがある。同業者だからこそ、我々には立ち入れない部分がある」


「…………」


「それにその男、けして生半可な気持ちではないはずだ。恩義を分かっていながら、あえて決別を図るという事……それはすなわち死をも恐れぬ強い覚悟だという事だ」


「誰にもそれを妨げる権利などない。邪魔立てすれば余計にそいつが傷付くだけだ」


「…………」


「……美空。全てはその、奏太が決めた事なのだ。いたたまれん気持ちは分かるが、今はその覚悟を見届けるしかあるまい……」


「……ちがうんだ……」


あたしは首を横に振る。
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