SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「どうしてっ!」


「お前は凌駕の婚約者なのだぞ、今は!」

「そのお前があの男を助けてみろ! 奴等は男が鬼頭会にくら替えしたと思うだろう!」


「わからないっ!」


「奏太の決意を無にする気か!」

「お前が動けば何もかもが台無しだ! あの男の意志も覚悟もプライドも! お前のせいで更に男が傷付く事になるんだぞ!」


「……っ、」


「辛いだろうが耐えるのだ!」
「頼むから少しの間こらえてくれ!」


二人は強くあたしに言い聞かせる。


……そんな……


「……だって……」


「それにあの柴田という男、特に奏太への思いが強いようだ……」

「兄弟の杯を交わしたぐらいだ。そう簡単にはいかないだろう。だが、兄弟だからこそ後は二人の問題なんだ。ちゃんとケジメをつけさせてやれ」


「…………」


……ちがう……


あの男は奏太と兄弟なんかじゃない。

しかも、あたしには分かるんだ。あの男の奏太への異常な執着が。

失うくらいなら、たとえ殺してでも側に置こうとするその歪んだ愛情が……


このままじゃ本当に奏太が……


奏太が死んじゃう……


奏太が……


奏太が……!!



「……ダメだああああ————っ!!」


 ビリビリビリビリビリッッ!!
ズッドオオオォォォ————ンッッ!!


衝撃があたしの体を駆け抜ける。

電流が流れたと同時に、突然、雷があたしの中に落ちてきた……


————ブワッ!!


続く衝撃波がみんなの体を遠ざける。


「……なっ、なんだっ!!」
「一体何が起こったのだっ!」


“ドクンドクンドクンドクンドクン!”


高まる鼓動……


これは……


この感覚は……


あたしはっ……!!


————ドクンッ!!


「 ! 」


その瞬間、完全にしるしの力が復活した。

しかも以前より格段にパワーが上がっている。
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