SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「ミク、オリコウサマデス」


引っ張ってくれたのは風使い。
前にあたしにバリアー強化を教えてくれた。


「……?」


"……パチ、パチ……"


まだまばらに聞こえる拍手の中、


「美空、この二人は簡単には死にませんよ」


真顔に戻った一樹が言う。


「……え?」


「この二人は我々がずっと追っていたボディ変化兄弟です。特異な体質故、そう簡単には死にません」


……? ボディ変化兄弟?


「あの、ボディ変化兄弟?」


「ええ」


「これが?」


「そうです」


「死んで、ないの?」


「ええ。その証拠に……」


一樹がサッと指をさす。

すると、


"……ゴブォ! ゴボゴボゴボッ!"


筋肉男にあいていた大穴。その傷口が徐々にふさがれてゆく。

ちっちゃい男の両手首からもゴボゴボ肉が盛りあがった。


「まあ、重傷には違いありませんが……」


「「「「……っ……!!」」」」


サッとフェノメナたちが身構える。

次の瞬間、


————ピュンッ!!


目にもとまらぬ早さで兄弟が同時に逃げ出した。


「「「「————っ!!」」」」


すぐにフェノメナたちが追いかける……


——ヒュウ〜……


「…………」


「あとは時間の問題ですね。いくら肉体再生できると言っても、先ほどあなたから受けたダメージは相当なはず……

今は力の差が歴然です。圧倒的にフェノメナの方が有利でしょう……」


「…………」


「……しかし、まったく、あなたって人は……」


一樹が呆れたようにため息をつく。


「……はあ、よかった。 あたし殺してなくて本当に……」


一安心し、あたしもハア〜と息を——


「よくないっ!!」


思い出してあたしは叫んだ。
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