SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
〈 “ あ〜、じゃあこっちの方が喋れるから、あたしも心で喋るね” 〉
あたしも心の声で会話する。
口に出すよりスムーズに、さっきの話の続きを始めた。
〈 “ 確かに奏太は超能力者じゃないけど、努力次第でそれに近付ける、一握りの人間らしいんだ ” 〉
〈 “ ……はい?” 〉
〈 “ もし今が大昔で、奏太が何年も修行を積んだ山伏だったら、しるしの器候補だったって ” 〉
〈 “ ……しるしの器候補⁉︎ ” 〉
〈 “ 精神面で不合格だけど ” 〉
〈 “…………” 〉
〈 “ でも、肉体的にはかなりズバ抜けたセンスがあるって。
今は周りに強い奴がいなくなってサボってるけど、鍛えれば鍛えるほど、奏太はどんどん強くなる。
ヘタな能力者より奏太の方が、将来は活躍する戦士になるんだ ” 〉
〈 “ ……っ、奏太が、ですか?” 〉
一樹は口をあんぐり開ける。
〈 “ でも、少し問題がある ” 〉
あたしはすぐに付け加えた。
〈 “ ……? ” 〉
〈 “ 一人前になるまでが大変なんだ。奏太、朝弱いし、トレーニングだってすぐサボる。人に命令されたくないし、怒られたら一気にやる気なくしちゃう ” 〉
〈 “ ………… ” 〉
〈 “ だから、一樹の力が必要だ。一樹の言う事なら奏太は聞くし、一樹がいれば奏太はがんばる。一樹が奏太を育てるんだ、D.S.Pの、最強の戦士に ” 〉
〈 “ ……っ…… ” 〉
〈 “ これは導きなんだ。D.S.Pで力を尽くすのが奏太の役目。それをサポートするのが一樹の役目……それが、しるしの真の意図だ ” 〉
あたしはやっと全部を言い切る。
〈 “ ……わたしの、役目……” 〉
横を向き、一樹はぼーっと奏太を見た。
「……? アニキ? 途中から何も聞こえてこねえけど、どうかしたのか?」
「……あ、ああ……」
「奏太! 良かったね!」
某然とする一樹の代わりに、あたしが奏太に声をかける。