SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ふうん……」
やっと湧人と視線が合う。
夜に見る銀の瞳はとても深くて濃い色だ。
自然と顔が吸い寄せられる……
「……っ、」
「分かった。じゃあ、今度からそうするね」
「……っ……な、に?」
「パッタリしない。パッタリやめる。そしたら湧人、寂しくない」
至近距離でそう言った。
「……ほんとに?」
「うん。だから……」
「……ん?」
「今日、一緒に寝てもいい?」
「……っ⁉︎」
パッと湧人の瞳が大きくなった。
「あたしすごく寝不足なんだ。だから一緒に寝てほしいんだ」
「……っ、なに言ってるのっ! そんなのダメに決まってるだろっ!」
「だってまだ悪霊が! あたし全然寝れないんだ!」
「……えっ⁉︎」
「湧人なら霊はじく。あたしゆっくり寝られるんだ」
「……っ、」
「お願い……あたしすごく寝不足なんだ」
「……っ、」
困ったように目を泳がせ、
「もうっ! 今日だけだからっ!」
湧人はベッドにもぐり込む。
背中を向けて布団をかぶった。
「……ありがとう……」
あたしもベッドにもぐり込む。
無意識にぎゅっと背中を抱きしめた……
「……っ! ちょっ、何やってるのっ!」
「だっこ」
「……っ……オレは抱き枕じゃないしっ! みく何か勘違いしてるんじゃない⁉︎」
焦ったようにワタワタ動くその体……
——ギュウッ……
動かないようにあたしは湧人を押さえこむ。
「……っ……ちょっ、みくっ……」
「ねえ湧人……あたし……」
そっと耳元にささやいた……
「最近、ずっと兄弟だった……」
「……っ、 ……え?」
「いろいろあったけど、兄弟っていいなって、思ったんだ……すごく、気持ちがあったかくて……」
「……う、ん……?」
「……こんな感じなのかな……」
「……え?」
「……もし湧人が、弟だったら……」
「……っ! なにそれっ! なんでそうなる訳っ⁉︎」
「…………」
「オレはみくの弟なんかじゃ……! だったらまだ友達の方がマシっていうか……!」
「…………」
「……ちょっ、聞いてる⁉︎」
湧人を胸に抱いたまま……
すでにあたしは深い眠りに落ちていた……