SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
“ 困った事があったらサヤに相談しろ ”
最近の黒木の口ぐせ通り、能力者たちと闘っている事をあたしはサヤに相談していた。
でも……
『無能なアンタが敵の能力者を相手に出来る訳ないじゃない!』
そう言って、サヤはまともに聞いてはくれなかった。
挙げ句の果てに嘘つき呼ばわり……
あたしが一人D.S.Pになっている事は、今は誰も知らなかった。
「…………」
あたしはサヤに視線を戻す。
……そういえば……
ふと、チームESPの誰かの言葉を思い出す。
たしかチームESPはリーダーの弘和より、サヤが仕切っていると言っていた。
みんなに、サヤはとても厳しいと……
戦力外だったあたしはチームにいなかったから真相はよく分からないけど。
確かに、サヤの言葉や態度は厳しい。
でも、
“ サヤの言うコト聞いてれば間違いナイ! ”
黒木が言うように、言っている事はけして間違っている訳じゃない……と思う。
あたしの事は別にしても、他はちゃんと話の筋が通っているし、あたし自身 “ なるほど〜” と納得する部分がたくさんある。
常識やマナーだってサヤの方がよく知ってる。
教育係というのはその通りで、怒られながらも、あたしはサヤから教わる事が多かった。
「ほら! さっさと洗い物! 昨日教えた通りにやって! 最初に汚れもの水につけてから!」
「うん」
やっぱり今日も、あたしはサヤに従った。