SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
————それから……
一日挟んだ連休の最終日。
あたしは昼間、透と街なかを歩いていた。
「なんだ薫のやつ! 呼び出しておいて何が急用が出来ただ!」
ブツブツ文句を言う透は、あたしの少し前を歩いている。
シンプルに黒でまとめた服装……
透の背中を見つめながら、あたしは少し考える。
……?
たしか今日は、薫の買い物に付き合うはずだった。
それがどうして透がここに……
「たく、何が気を利かせただ! 余計なマネしやがって……!」
今度は電話のやつを見ながら文句を言う透の後ろを、あたしは黙ってついて行く。
「……つーか、何で後ろ歩いてんだよ?」
透があたしに振り向いた。
……?
「だって透、迷惑そう。歩くの速いし」
「……はあ? 別に迷惑じゃ……」
「……?」
「……悪かったな、気が付かなくて。ゆっくり歩くから隣……歩けよ」
「……うん」
今度は速度を落とした透の隣を、いつものように並んで歩いた。
"チャララ〜♪ ラ〜ラララ〜♫ "
「「「キャハハハハ!!」」」
休日という事もあって街は人で溢れていた。
人の波をよけながら、あたしはキョロキョロ辺りを見回す。
普段あまりこういう場所は来ないから、見るもの全てが珍しい……
「……せっかくだし、どっか見るか?」
照れくさそうに透が言う。
「うん」
あたしはコクンと頷いた。