SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「この間はわたくしの歓迎会にお越し頂きありがとうございました! 透さまのおかげで楽しい時間を過ごせましたわ!」
長いツインテールを揺らしながらサヤが透の前に来る。
「美空さまとご一緒でしたのね? 二人、とっても仲がよろしいんですのね!」
「……ああ、いや、別に……」
「うらやましいですわ! 透さま? 今度はわたくしとご一緒して頂けませんか?
まだ越して来たばかりであまり土地勘がないもので……この辺りを二人でお散歩できたらと」
「…………」
「食べ歩きもいいですわね! どこかおすすめのゴハン屋さん知りません? おいしいお食事の合間に、ぜひ指揮官のお話などを伺いたいですわ!」
「…………」
「あっ、その時は妹さまもご一緒に! 年も近い事ですし、仲良くして下さると——」
「——なあ、」
透が言葉をさえぎった。
「この間も思ったんだが、そういうの疲れねぇ?」
何かを見抜くような眼差し……
「……はい?」
「オレの思い過ごしかもしれねえけど、おまえ何か無理してるような気がするからさ」
「……無理、とは……?」
「ワザと自分つくってるっつーか、別の顔、隠してんじゃねえかって……」
「……っ、なにをっ、そんな事ありませんわ!」
「……そうか?」
透の強い眼差しに、サヤの瞳が一瞬揺らぐ。
「……あ、の……?」
「……ハァ。これも前のオレじゃ気付かなかった事だな。たく、いつの間にかだいぶ影響受けてんな」
「……え?」
「……ああ、いや、こっちの話だ。コイツの友達にすげえ奴がいてな」
「……?」
「まだ小学生のガキなんだが、中身はオレより大人っつーか……人を見る洞察力が半端なくてよ。オレが教わる事の方が多いんだ……」
「……??」