SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
“ドイツ組織による特別強化プログラム”
それは日本やイギリスでの新人研修や通常トレーニングより格段に厳しいと言われている。
期間はおよそ二年にも及ぶもので、その間、隊員たちは限界まで体を鍛え上げながら、能力者に対するありとあらゆる知識や闘い方などを徹底的に叩き込まれるのだ。
「……でも、一樹兄さまがいらっしゃらないと、やっぱり心細いですわ……」
「ンア〜。そ〜だな〜。きっと今までがイツキに頼りすぎてたんだナア〜……」
「今は事件がないからいいけど、一樹くんがいないと私たちも不安だわ……」
三人が一斉に下を向く。
「大丈夫ですよ」
一樹は明るく声を飛ばした。
「D.S.Pには、わたしの信頼する後輩テレパスもおりますし、こうして時々は帰って来られるのです。
何かあればすぐに日本へ行けるよう、常に準備もしています。
離れていても、わたしがD.S.Pの一員である事に変わりはないのですから……」
「……イツキ…… 」
「……一樹くん……」
黒木とユリの目線が上がる。
「そっかあ〜、そ〜だよナア〜!」
「ごめんね一樹くん、変なこと言って!」
「いえ」
そんな中、サヤだけは下を向いたまま……
「……でもわたくしはっ! やっぱりすごくすごく寂しいですわっ!!」
感情のままに言葉を吐いた。
「「……サヤ……??」」
「一樹兄さま! どうして⁉︎ どうして一樹兄さままでがドイツに⁉︎ やっぱりサヤには分かりませんわ!」
「それはもう説明したでしょう」
「いいえ! 納得できません! わたくしはっ、わたくしはっ……!」
「「……サヤ……⁉︎」
涙目になったサヤに黒木とユリが動揺する。
「……ど、どしたあ? サヤ?」
「……っ! もしかしてっ……」
ユリがそっと黒木に耳打ちする。
「……でええっ⁉︎ サヤ! おまえイツキの事が好きなのかあ〜⁉︎」
「……っ、誠さんっ!」
急に場の空気が浮き上がった。