SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……好きですわ。もうとっくに気持ちも伝えてあります。フラれてしまいましたけど……」
「「……っ……⁉︎」」
黒木とユリの顔が引きつる。
「……そ、そっかあ〜、兄チャンは全然知らなかったなあ〜、そんなコト」
「……! まさか! サヤのスランプの原因はそれ⁉︎ 一樹くんに失恋したから……そのっ、」
「ダア〜っ! そ〜なのかあ〜っ⁉︎」
「……っ、」
サヤは唇を噛みしめる。
「……そうですわ」
コクンと小さく頷いた。
「「……っ……!!」」
「でも、失恋だけでしたらまだ……だって今まで何度告白してフラれてきた事か……」
「……でえっ⁉︎」
「そうだったの⁉︎」
「……ただ、どうしても一樹兄さまがドイツに行ってしまわれた事のショックが大きくて……
会えない日々の苦しさがこんなに、能力に支障をきたすまでになるなんて……わたくし、思いもしませんでしたわ」
「「……サヤ……」」
「一樹兄さま! 今からでも遅くありません! どうか考え直して下さい! どうかこのまま日本に留まっていて下さい!!」
サヤは必死に訴える。
「……ハァ、」
やれやれと一樹は顔を曇らせた。
「もう考えた上での決断です。今さら変更など出来ません」
「どうしてですの⁉︎ どうして弟さまの為にそこまで……⁉︎ 心配なのは分かります! でも弟さまはもう子どもじゃありませんわ! わざわざそばに付いていなくたって!」
「子どもですよ」
「……え?」
「彼はまだまだ子どもです。少なくともわたしにとっては。 ですから、わたしがちゃんと責任をもって面倒を見てやらねばなりません」
「……そんなっ!」
「わたしがそうしたいのです。誰に何を言われようとも、それを曲げるつもりはありません」
「……っ、」