SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「離れていた分、余計にそう思うのかもしれませんが……奏太を一人にさせるなど、わたしにはもう考えられない事なのです」


「……っ、」


「それに、手のかかる弟ゆえ、わたしがいないと日々の特訓もはかどりません。現に先程から早く帰れと連絡が……

どうやら、また奏太が教官たちを困らせているようです……

まったく、やはり奏太にはわたしが付いていないと駄目ですね」


一樹はフッと目を細める。


「そんな……わたくしだって一樹兄さまがいないとダメですのに……」


サヤはシュンと肩を落とした。


——シン……


なんともいえない微妙な雰囲気。


「……ンア〜、 いや〜、 ナア〜?」


取り繕うように黒木がパンパン手を鳴らす。


「元気だせサヤ〜! 事情はともかく今日はイツキが来てくれたじゃないか〜!」


「そうよ! なんだかんだ言って一樹くんも本当は気にしてるのよサヤの事! でなきゃサヤの為にわざわざ歓迎会なんか来てくれるはずないわ!」


「……そう、ですの……?」


「そうだって〜! なあイツキ〜? 早くサヤの隣に座ってやれヨオ〜!」


「サヤの手料理は絶品なのよ〜!」


二人は一樹をテーブルへと促す。


「……いいえ」


一樹は首を横に振った。


「……?」
「イツキ?」
「一樹くん?」


「誤解させたのならすみません。しかし、わたしは歓迎会の為に今日ここへ来た訳ではありません」


「「「……へ??」」」


一樹はスタスタ歩き出す。


「今日来たのは美空に会う為です」


すっかり存在感が薄くなってる、あたしの前で立ち止まった。
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