SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「……すみません……」


しばらくすると急に一樹が口ごもった。


……?


「どうしたの?」


「……いえ、ついわたしの話ばかり。今日はあなたの話を聞きに来ましたのに」


「あたし?」


「ええ。挨拶や報告はもちろんですが、いくつか気になっていましてね、最近のあなたの周りの状況が……」


「どういうこと?」


すると、一樹は真剣な顔をした。


「まずは……サヤの事です」


「サヤ?」


「実は以前、良くない噂を耳にした事があり……わたし自身、彼女には少し別の人格を感じ取っていたものですから……」


「…………」


「事後報告で同居する事になったと聞き、心配していたのですよ。もしや、何か困っているのではと……」


「…………」


「……美空、正直におっしゃって下さい。サヤの事で、何か困っているのではありませんか?」


一樹が顔をのぞき込んだ。


「…………」


……困ってる?


「別に、なにも困ってない」


「……しかし、」


「その逆。あたしいっぱい助かってる。サヤ、いろいろ教えてくれるから」


「……教えてくれる?」


「常識とか。あたし勉強してるんだ」


あたしは事実を一樹に話した。


「……常識……」


「うん。食べたらきれいに片付ける。部屋もきれいに片付ける。おこづかい、39万は多い事」


「…………」


「サヤの言うの、間違ってる?」


「……いいえ」


「ほら、黒木とユリの言う通り。やっぱりサヤは間違いない」


それでも一樹は不審な顔……


「……本当に大丈夫なのですか?」


もう一度、確かめるようにあたしに聞いた。
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