SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……そのブレスレットは?」


「湧人がくれた」


「ああ、例のGアンチの……」


「アクアマリンって言うんだって。心が元気に癒すの力で、湧人が作ってくれたんだ」


あたしはこの間の事を思い出す。

縁側でまったりしていたら湧人が手を出してって言ってきて、これを手首につけたのだ。

どうやら前々から内緒で準備していたらしく、ありがとうって言ったら照れたように少し顔を赤くしていた。


「それは優しいお友達ですね。昨日の満月はその湧人くんと?」


「うん。湧人約束してくれた。満月一緒にいてくれるって。黒木とユリも、それが一番安心だって」


「……そう、ですか……」


ゆらり一樹の目が泳ぐ。
アゴに手をあて、何か悩む素振りをみせた。


「……いつき?」


「……ああ、いえ、実はその件についても気になっていましてね」


「気になる? なにが?」


「その、湧人くんの事がです」


「湧人?」


「差し支えなければ、一度湧人くんに会わせて頂けませんか?」


「……えっ⁉︎」


おもわず大きな声が出た。


「……どうか、しましたか?」


「……ううん。 でも……」


「……?」


「どうして……会うの?」


あたしはじとっと一樹を見る。


「それは……Gアンチの効力について、確かめたい事がありまして」


「…………」


「……と言っても、今日は時間がありませんから次に来た時ゆっくりと……構いませんか?」


「…………」


「……美空?」


「……し、ない?」


「……はい?」


「なにもしない?」


「どういう意味です?」


「だって湧人は秘密の友達。何かされたら……困るんだ……」


「ああ、」


すぐに一樹は察知する。


「大丈夫ですよ。心配しなくても彼の記憶を消すような事は致しません」


にこりとあたしに微笑んだ。
< 595 / 795 >

この作品をシェア

pagetop