SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……本当?」


「ええ。それに最近は規制も厳しく……わたしたちは民間人、及び能力者の間であってもむやみに力を使うなと言われているのですよ」


「……へえ」


「確かに湧人くんの場合、我々の事、D.S.Pの事を知り過ぎてはいますが……でも美空にとって、彼は信頼の出来る大切なお友達なのでしょう?」


「うん」


「でしたら、美空が悲しむような事は致しません。満月に美空のそばにいて反応を抑えて頂けるなら……わたしもそれが一番安心です」


「……いつき……」


その言葉にあたしも首を縦に振る。


「じゃあ、いいよ。今度来たとき会わせてあげる。一樹だけ、特別ね」


「それはとても光栄ですね。会えるのを楽しみにしていますよ」


また、一樹は微笑んだ。


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————それから……


「一樹兄さま! 今日はお会い出来てとっても嬉しかったですわ!」


さっきはうつむいていたサヤが満面の笑みを浮かべて言う。

一樹を見送る為、あたしはサヤと二人、玄関へと立っていた。


「また、すぐいらして下さいね? 一樹兄さまが来て下さるのをサヤは心待ちにしております!」


「ほんとサヤはケナゲだなあ〜」


「大丈夫よサヤ! サヤの純粋な気持ちはきっといつか一樹くんにも届くはずよ!」


「はい! サヤはけして諦めませんわ!」


「……ではまた」


軽くあたしと目を合わせ、一樹はマンションを後にする。


「さて、オレらも新人教育行ってくるか〜!」

「サヤ! 美空のこと頼むわね!」


追いかけるように二人も外へ出て行った。


——パタン。

玄関の扉がゆっくり閉まる。


「……ハア〜、」


いつも通り聞こえるため息。

そして、


——パアンッ!


サヤがあたしの頬をひっぱたいた。


「……えっ……」


あたしは訳が分からない。

手を出されたのは初めてだ……


「アンタが悪いんだからね!」


すごい形相でサヤが睨む。


「男を部屋に連れ込むなんてっ! アンタどんだけ常識ないのよっ!」


ドン! と押され、あたしは壁に衝突する。


……?


「男、連れ込む……だめなの?」


「当たり前でしょ! しかも一樹兄さまを! 色目使うなって言ってんのっ!」


「……いろめ?」


「いい? これからは今までみたいに甘くないわよ! そのバカすぎる頭にみっちり常識を叩き込んであげるわ!」


宣言通り……

その日からサヤの指導は厳しくなった。
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