SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……とおる?」
「ああ、いや、詳しい内容までは……やっぱオレには難解だな」
「…………」
「でも、要は嫌な夢を見たから……おまえは気分が落ちてるって事だろ?」
「うん」
「なら、そんな夢とっとと忘れちまえ。所詮は夢だ、どんなにいい夢でも悪い夢でもいつかは覚める、それが夢だ。あんま気にするな」
「……うん」
「……つっても、たまにオレもあるけどな、夢にうなされる事ぐらい」
「……え?」
「……ま、誰でもあるさ、そういう事。オレの場合、そういう時はいつもの倍楽しむようにしてるけどな」
「楽しむ? どうやって?」
「ん〜、本読んだり映画観たり、音楽聴いたりゲームやったり、あとは……」
「……?」
「好きなもん食ったりとかだな!」
「……好きなもん、食う?」
「おっ、あそこに店出てんじゃねーか。ちょっと寄ってこーぜ!」
透はさっと指を差す。
そこにはたこ焼き屋さんのキッチンカーが一台。
「……でも、あたしお金……」
「なんだよ、また18円しかねえのかよ」
「うん」
「……ったく、しょうがねえな……おごってやるよ!」
「……え、でも……」
「いいって! おまえたこ焼き好きだろ?」
「うん」
フッと笑い、透はキッチンカーに足を運んだ。