SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……オレ、前に親父から聞いてたのもあって超能力については詳しいんだ。

もともと、ESPとバリアーじゃ能力の質っつーか……タイプが全く違うんだ。

バリアーは攻撃を防御するものだが、実はれっきとした攻撃型で……」


「……?」


「……とにかく、オレはそんな能力者、聞いた事がない。おまえ本当に……」


「透が言うの、分からない」


「多重人格みたいなモンだ。タイプの違う能力を二つ同時に操るなんて……それが内在するだなんて……」


信じられないといった透の顔。

その様子に薫も視線をウロウロさせる。

……と、


——ガクッ!


突然サヤが倒れこんだ。


「……は? ……おい!」


崩れ落ちるその体を透がしっかり抱きとめる。


「なに? どうしたの?」
「わっかんねえ、おい!」


呼びかけるも返事はない。
だらりと手足を投げ出して、サヤは頭を垂れている。


「おい! どうした! ……おい!」

すると、


「 ! 」


弾かれたようにパッとサヤが顔を上げた。

拍子抜けしてしまうほどスッキリとしたその表情、瞳は大きく見開かれている。


「……ちょ、 なに……?」
「どうしたっていうんだ……」


——ビクン!

サヤの肩が跳ね上がる。


「……わたくし……」


ひと呼吸の後、サヤは口を動かした。


「わたくし、分かりましたわ」


「……え?」
「……は?」


「分かって、しまったのです」


感情のない喋り口……

少し異様な光景に二人は顔を見合わせる。


「おい、おま——」


透が何か言いかけた時、


「Blue doll」


発せられたその言葉に二人は息をのみこんだ。
< 629 / 795 >

この作品をシェア

pagetop