SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


凛子のうしろから道着を着た、白髪の老人が姿を見せる。

刻まれた深いシワ、力のある鋭い眼光。
たっぷりとたくわえられた白いヒゲが、いかにもという雰囲気をかもし出している。


「 人を出入りさせられる、内部から外に攻撃出来る柔軟性じゃ 」


この老人は武田荘厳(たけだそうごん)。凛子のじーさんだ。

二人はD.S.Pでは“武田トレーナー” と言われている。

いわゆるPSYコンサルタントというやつで、PSYについて現状分析、改善策の提案、指導を行うのが仕事だそうだ。


D.S.Pに所属するPSY能力者は、この武田トレーナーに指導を受けなければならない。

そうしないと、自分の能力の可能性を広げられないからだ。


「 あらゆる危険予測もせんとな!」

"ビュオッ!"

じーさんが隠し持っていた石をあたしに投げる。


「……っ!」


あたしはバリアーを、


"ゴンッ!"


……張れなかった。
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