SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

……!

硬直する二人同様、あたしも身動き出来なくなる。


「……い、ま……」
「……なんて……」


再び口を開いた二人は、青ざめた表情を浮かべていた。


「失礼」


拘束の緩んだ透の腕からサヤはするりと体を抜け出す。


「まずはあなた方に感謝を」


こちらの様子などお構いなしに、サヤはペコリと頭を下げた。

そのまま再び口を動かす……



「先程はみんなに責められ咎められ、わたくし、すごく辛い思いをしましたわ。

でも、その悔しさとあなた方への強い怒りが荒療治になったのではと……

まだ完璧とまでは言えませんが、不調だったESPが少し戻ったようなのです」


「「……っ⁉︎」」


「ESPの中でも、わたくしは透視と予知を得意とする者。 なので分かってしまったのです。あなた方の意外な共通点……それが “ Blue doll ” だという事を」


「「……っっ……」」


——“ Blue doll ”


その言葉がまた透と薫を緊張させる。

あたしの心も堅くなり、うまく呼吸が出来なくなった。



「まったく、運命とは皮肉なものですわね。わたくしは間違ってなかったんですわ。だって透さまと薫さま、これからの二人のお気持ちをちゃんと予測していたんですもの」


サヤだけがひょうひょうと、ひとり時間を進めていく……
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