SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……ねえ、ウソでしょ? 美空さんがBlue dollだったなんて、そんな……」

「こいつがデタラメ言ってんだろ?」


「…………」


「ねえっ! 美空さんっ!」
「美空っ! ちゃんと答えろっ!」


「…………」


あたしは何も返せない。

何も、言葉が出てこない……


「……みく、さ……?」
「……おい、美空……」


次第に二人の顔が乾いてゆく……


「……ハア、」


滞った空気をかき分けて、サヤが一人動きだした。


「仕方ない。証拠を見せてあげる」


そう言うと、いつの間に手にしていたのか、ハサミであたしの服を切る。


——ジャギジャギ!


肩口から露出した肌、

左腕、その一点に貼り付く視線……


「————!!」


隠れていた青い刻印があらわになった。


「……あっ、 ……あっ、」
「……っ……そ、れは……!」


「二人ともこれが何か分かるでしょ? 特に薫さまは見ているはず……誘拐されかけた時、犯人の腕に同じタトゥーがあったのを!」


「……う、 うそっ……」


「紛れもなくこれがBlue dollの証しだわ!」


「……いやああああ〜っ!!」


響き渡る薫の声……


泣き崩れるその隣、


透はまるで抜け殻のように、ぼんやりこちらを見つめていた。
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