SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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その後の事は、よく覚えていない。


いつの間にか透も薫もいなくなって……


黒木とユリが帰ってきて、それから……


それから——


“……ザアアアアッ……!”


一段と強まる雨。


ふと立ち止まって空を見上げる。


目を閉じて冷たい雨を受け止めた……


「…………」


……なんでだろう……


体は冷えているのに、震えのひとつも起きなくて


今はこの冷たさが丁度いい……


“……ザアアアアッ……!”


————出て行きなさい!


ふいに声が蘇り、あたしはパッと目を開けた。


そうだ、あたし……


ぼやけていた記憶が途切れ途切れに舞い戻る。


あたしユリと……


ユリと喧嘩したんだ……


……喧嘩?


ちょっとちがう、ユリがあたしに怒っただけ。 


サヤから聞いた何かの言葉に……


「…………」


一体何を聞いたんだろう……


何を怒っていたんだろう……


分からない……


ただ、


————出て行きなさい!


目に涙を浮かべながら、最後にユリはそう言った。


ユリ……黒木も、すごく悲しい顔してた。


それからあたしは家を出た。


雨の中、ずっと歩き続けてる……

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