SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「…………」
その行動、言葉にあたしは戸惑ってしまう。
まっすぐには見られない、中途半端な角度から湧人の口の動きを目で追った……
「やっぱりあの時、無理矢理にでも押しかけていれば良かったんだ。 オレ、気付いてたのに……ごめん」
なんで湧人が謝るのか、何の事を言っているのか、あたしには分からない。
声には悔しさが滲んでいた。
「とにかく……家、帰ろ? このままじゃ……早く体あっためないと」
湧人が軽く腕を引く。
「……ううん」
あたしは首を横に振った。
やっと口から出た声は、低くて少しかすれている。
「……みく?」
「……あたし……」
「……ん?」
「……家、出たんだ、だから……」
もう、帰る家なんて……
「知ってる。 だからオレの家に……帰ろ?」
「……!」
それから湧人は、さっき思ったあたしの疑問に答え始めた……
「昨日の夜、みくのスマホから電話かかってきてさ、出てみたらユリさんで……それで知ったんだ。
びっくりした……出て行ったって聞いて。そっち行ってないかって言われて。
それからずっとみくを探してた。思いつく所、もちろんここにも来てみたけど、その時はいなくて……」
……そう、だったんだ……
心の中であたしは頷く。
「黒木さんとユリさんも心配してたよ。二人もかなり探し回ってて……」
……⁉︎
探し回ってた……?
……どうして……