SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「途中で何度か見かけてさ、声かけたらやっぱりそうで初対面……そのあと、何があったのか聞きたくて、マンションに上がらせてもらったんだ」
「……え、」
「それで……聞いた。みくが二人に、赤の他人なんだから干渉するな、親でもないのに迷惑だって言った事。 だからユリさん、みくに……」
「…………」
初めて聞く話だ……
そうか、あたしそんな事
無意識に、言ったのだろうか……
「違うよ」
見透かしたように湧人はそれを否定した。
「みくがそんなこと言う訳ないし。それでオレ……ちょっと反論しすぎたかも」
「……?」
「ついカッとなっちゃって……そう吹き込んだ奴もそれを信じた二人にも。
みくの一体何を見てきたんだって、そんなすぐ崩れる弱い関係だったのかって、だったら今後みくはオレの家が引き取るって出て来たんだ。
きっと、すごく生意気なガキだって思われただろうな……」
困ったような苦笑い……
よく分からなくてあたしは首を傾ける。
「だから……早く帰ろ?」
湧人が再び手を引いた。
「…………」
「……みく?」
「……だめだ」
やっぱりあたしは首を振る。
さっとその手を振りほどいた……
「……み、く……?」
「ユリのその事だけで、そうした訳じゃない。あたしは、あたしが家を出るって決めたんだ」
「……え?」
「やっと分かったんだ、モヤモヤの原因。だから……」
「……?」
「湧人。あたしは、」
決意を固めて立ち上がる。
「あたしはBlue dollなんだ」
今度はちゃんと目を見て言った。