SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……Blue doll?」


「犯罪者だ。悪い組織だ」


「……?」


突き放さなければならない。

湧人を……

湧人を汚してはいけないのだ……


「Blue dollは超能力でいろいろ悪い事をした。すごくすごく悪い事。そして……

透と薫の、お母さんを殺したんだ」


「……っ……!」


時が少し停止する。

湧人は驚きの表情を固めていた。


「昨日それを知ったんだ。 友達だったのに、あたしは二人の敵だった。 二人を、傷付けた」


「……っ……」


「悪い奴だって、犯罪者だって分かってた……でも、満月の時以外は感覚が鈍くて……

なかった事にも、したかったのかな……

だから本当の本当には分かってなくて、透と薫のお母さんのこと聞いて、知って、やっと自分の罪が分かったんだ」


「……っ……」


「あたしはBlue dollだ。 犯罪者だ。 人殺しだ。 だからもう——」


声を強める……


「湧人とは、さよならだ」


目の前の存在に背を向けた。

そのままゆっくり歩き出す……


——ザワッ……


風がハンカチの木を微かに揺らしてる……


「……なんだよそれ……」


声が滑り込んできた。

あまりに切ないその声に、おもわず足を止めてしまう。
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