SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……行かねえか、美空のとこ……」
「……え?」
「ちゃんと聞いてねえだろ、オレら。アイツの口からまだ何も……」
「……あ、」
確かにBlue dollである証拠のタトゥーはこの目で見た。しかし本人の口から何も事情は聞いていない。
それに……
薫は昨日の美空を思い浮かべる。
まるで人形のようだった。
顔は白く無表情で身動き一つしなくなって……
でも、その目はどこか怯えていた。
淋しそうな、悲しそうな……瞳の奥の小さな震えを薫はちゃんと覚えている。
「……お兄ちゃん……」
「……ああ、」
二人の意志が合致する。
聞けばまた傷付くかもしれない、
もっと苦しい思いをするかもしれない、
絶望の淵まで追いやられるかもしれない、
でも……
————わずかな希望にすがりたい
弾かれたように二人は外へ飛び出した……