SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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“ピンポーン”

——ガチャ!

「「……美空っ……」」

「「……っ⁉︎」」


「……なんだ、オマエら……」
「……透くん、薫ちゃん……」


勢いよくドアが開いたと思ったら、すぐにガッカリされてしまう。


「……ああ、悪い。 てっきり……な、」


マンションにはやつれた黒木とユリがいた。


「すみません朝早く……けど、オレたちどうしても美空に……!」

「美空さんと話がしたいんですっ!」


切羽詰まった様子に二人は顔を見合わせる。


「……んと、電話したんだけどな。オマエ全然繋がんねえし……留守電も聞いてないのか?」


「……⁉︎」


黒木に言われ、透はスマホを確認する。

表示された “ 不在着信 ” の件数の多さに顔をしかめた。


「美空ね、出て行ったのよ……昨日」


「「……えっ⁉︎」」


「私が強く言いすぎたの……それで。 でも、よく分からないの。湧人くんの話だと……もう何がなんだか私っ……ごめんなさい、つい美空が戻って来たとばかり……」


涙ながらにユリは言葉を並べ立てる。


「悪い。動揺してんだ……」


黒木はそんなユリを気にして言った。


「「……っ……」」


出て行った、という事は分かったが、いまいち状況がつかめない。

うろたえる透と薫だが、視線は奥に佇むサヤの姿を捉えていた。

ふてぶてしい顔……

一体何しに来たんだ、という様な不機嫌さでこちらをじっと見つめている。


「……いえ、」


昨日の事が蘇り、息苦しさから透はすぐに視線をそらした。
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