SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……イジメ、だあ……?」
「嘘でしょ……そんな……」
「そう! みんな嘘ですわ!」
「いや……それも、だが……」
「サヤ……あなた、何で……」
「……は、い?」
濁り始めた場の空気……
「——いや! だからっ!」
話を戻すように透が声を張り上げた。
「とてもショックでした。美空がBlue dollだったなんて……」
「ええ。まさか美空さんが、お母さんを殺したあの凶悪な犯罪組織のメンバーだったなんて……」
「待ってくれ透っ! それはっ……!」
「薫ちゃん違うのっ! それにはいろいろ事情があって!」
“ 事情 ” という言葉を透と薫は聞き逃さなかった。
……やっぱり……
仄かな光が胸に射し込む。
「だからその事情を聞きに来たんです!」
「直接、美空さんの口から!」
「「……っ……」」
強い眼差しに黒木とユリが息を止める。
そこへ黒木に着信が入った。
「……あ、コイツ!」
登録したばかりの相手を確認し、黒木はすぐに電話に出る。
「……おう湧人。さっきは……は⁉︎ 美空が見つかった⁉︎ ……おまえの家にしばらくって……あっ、おいっ!」
透と薫は急いでその場を後にする。
希望をより強いものにして、湧人の家を目指して走った……