SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇黒木とユリ



——バタバタバタッ……


慌ただしく透と薫が去って行く……


パタン、と勝手に扉が閉じて、間もなく黒木も電話を終わらせた。


「誠さんっ! 美空、見つかったのね!」


「ああ、今湧人と一緒にいるってよ。だいぶ落ち込んでるみてえだが体は別に何てことねえって……」


「……そう、 良かった……」


二人は共に安堵する。

本当は今すぐにでも迎えに行きたい所だが、堪えて息を整えた。


「「…………」」


胸の違和感を確認する。

確実に居座るそれは、だんだん二人の心を締め付けてくる。


——確かめなければならない……


「「……サヤ……」」


二人はサヤに切り出した。


「……あのな、正直に言って欲しいんだ。 オマエ、美空を……イジメてたのか……?」


「……っ……違いますわ! いじめてなど!」


「それじゃあ、美空の過去の話をしたっていうのは……?」


「……え? ああ、それは少し……でも、」


「そおか……じゃあ、もうとっくに能力は戻ってたってワケかあ」

「なのに、どうして昨日は嘘を? あなたならESPで美空の居場所ぐらい分かったでしょう?」


「……っ……」


「オレたちが必死にミクを探してんの分かってたよナア……?」


「あなたはずっとここにいて、チームESPと連絡を取り合っていたのよね? 美空の居場所を突き止めるって。

でも、私ずっと不思議で……

なんで昨日に限って、みんなの探査能力がアテにならなかったのか……」


「……っ……」


「ワザと……なのか? おまえ、ミクに戻って来てほしくなくてそれで……」

「そんなに……美空の事が嫌いだったの?」


ガッカリしたような、諦めたような、悲しみに沈んだ二つの顔……

すでに二人のサヤを見る目が変わっている。
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