SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……ち、違います! 誤解ですわ!」
「でも、ミクがBlue dollだったってコト……喋ったんだよな?」
「よりによって透くんと薫ちゃんに……どうしてそんな残酷な事……」
「それはっ……でもっ、わたくしは本当の事を言っただけです! だって、あのまま仇だと知らずに一緒にいる方が残酷かと……!」
「おいおい、本当の事って……」
「美空が仇だなんて、そんな……」
すると、
「——もうやめるんだっ!」
突然、誰かが家に入ってきた。
「「「……っ⁉︎」」」
驚くと共に、それが誰かを認識して、みんなが「あ!」と声を上げる。
「ヒロカズ!」
「弘和くん!」
「……っ……」
入ってきたのは “弘和 ”
一見、どこにでもいそうなこの地味な眼鏡男は、チームESPのリーダーであり、能力レベルも最高クラスのAランクという確かな実力を持つ青年……。
「……オマエ、なんでココに……」
「勝手にすまない……しかし、さすがの僕もこれ以上黙っているのは辛くてね」
黒木とユリは困惑した。
いつもなら開口一番、嫌味や憎まれ口を叩く男が、やけに真剣な口ぶりだ。
——ガタッ
「悪かった! どうか許してくれないか!」
ひざまずき、弘和はその場に土下座した。
「……エ⁉︎ オイ!」
「……弘和、くん?」
「僕は嘘をついていた! そして、ずっと見て見ぬふりをしていたんだ!!」
「「……っ⁉︎」」
ただ事でない様子に黒木とユリの顔がこわばる。
「……僕はっ、 僕はっ……!!」
頭を下げた状態で弘和は暴露し始めた。