SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……なんだ、これ……」
「……どうなってるの……」
すると、
「——仮想空間」
声が耳に飛び込んできた。
「「……っ!」」
二人はその身を強張らせる。
いつの間に——、
男がすぐ目の前に立っているのだ。
妙な感じのする男だ……
病的に白い肌と、髪の毛までも真っ白で、細い目からは黒目だけが見えている。
「18回」
男はボソッとつぶやいた。
「「……⁉︎」」
「意外に早かった。気付いた時点でここは異世界。気付かなければまた繰り返す。何度も何度も……」
「……おまえっ、能力者か!」
薫をかばうように透は男を睨みつけた。
「そう。僕は能力者。僕は時空を操るんだ」
「……っ、」
「タイム能力とは違う。ちょっと違う。僕は空間に歪みを作り……三次元を……」
口をあまり動かさずに喋る為、所々が聞こえづらい。
「……っ……おまえ何が目的だっ!」
苛つきながら透は男を威嚇した。
「目的は時間稼ぎ。僕はただの足止め役」
「……は、あ?」
「用があるのはあの二人。どうやらやっと……ああ、分かった。今すぐに……」
最後を独り言のように喋った後、男の顔が上を向く。
「……ガアッ!!」
口と両目を大きく開け、それまでにない迫力で空に向かって吠え上げた。