SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
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「……はあ、」


あたしは土手に寝転がる。

ゆるやかな傾斜に広がる、紫色の小さな草花。

近くには八重桜が、ピンクのぼんぼんとした花を咲かせている。

風がふわり、甘い香りを運んだ。


「……きれい……」


あたしは空の青に見とれていた。

まぶしくて、壮大で、静かに時をつむぐ、穏やかな青空を……

そして、伯耆坊たち天狗の言葉を思い出していた。


《 娘よ。レムリアはそなたに、小さな事から始めよと言っておる。周りの者の為に力を尽くし生きるのだ。それが、後に我々の大義にも繋がると。どういう意味かは分からぬがな…… 》


「……本当、どういう意味?」


その言葉が気持ちに拍車をかけていた。

D.S.Pにいる以上、あたしは強くなければならない。

D.S.PはPSY絡みの事件を専門としている。

安定した強い力が発揮出来なければ、敵のPSY能力者とは戦えない。

ここには、他にもトレーニングを受けている能力者たちがいるけど、はっきりいって、あたしの力はそいつらよりもだいぶ劣っていた。
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