SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「あたしが熱だした病院、アイツらがいて……目が覚めたら死んでたんだ……めちゃくちゃに切り裂かれてて、血の海で……」


「……っ……!」


「記憶操作で、あたし、ずっと生きてる思ってて……社会貢献しないと殺されるって、だから……」


「……っ……!」


「……人体実験、受けたんだ。だからあたし超能力になったし、ESPマスターにも……」


そこまで言って口を止める。


……なんで……


……湧人が、泣いている……


黒木とユリみたいな泣き方じゃない。


息を止めるように顔を硬く強張らせ、大きく見開かれた両目からは大粒の涙が零れ落ちる……


「……ゆう……」


わずかに開かれた唇は小さな震えを見せていて、何かを言おうとしているのに、言葉が何も出てこない。

苦しそうな呼吸だけが、時折もれて聞こえてくる……


「……どう、したの?」


「……っ……」


「……ゆうと……?」

すると、


「……ハアッ、」


荒く息を吐き出して、湧人は硬く口を結ぶ。

何かを堪えるその表情……


「……ゆう、と?」


「……っ、 ……ごめん……」


「……え、」


「何て言えば……今、言葉が見つからない……」


そう言うと、湧人は再び口を閉じる。


一体どうしたというのか……


探ってみるけど、やっぱり感覚が鈍いせいで、湧人からは何の感情も伝わらない。


「…………」


首を傾けながらあたしは外へ視線を向ける。


……!

見知った二人が視界に映った。
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