SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「そうだ薫! さっき……!」
「……あっ、そういえば……!」


思い出したように薫が慌てて何かを取り出す。


「美空さん! あたし特効薬持ってるの! さっき知り合いの人に貰って、それで……!」


それは透明の小さな袋に入れられたカプセルだった。

青い色のそれが三つ、裸のままで入れられている。


「はい! これ飲んで! きっとすぐに良くなるから!」


薫は袋からカプセルを取り出し、それをあたしの手のひらに転がした。


「……特効薬……」


触れた途端、強い悪寒が駆け抜ける。

そして、


「そうだ、エナジードリンクも貰ったんだ、これで飲めよ」


今度は透が何かの小瓶をもう片方の手に持たせた。


「……エナジー、ドリンク……」


これも嫌なものが込み上げる。


「ほら、早く飲めよ」
「飲んで、美空さん」


二人が微笑む。

その顔が急に不自然に歪みだす……
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