SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……っ、」
これが二人の任務なのだ。
あたしにこの薬を飲ませる事が。
二人の手であたしの命を奪う事が。
もしそれが失敗すれば、自ら命を絶つよう、肉体が行動操作されている。
心臓が止まるという、本人でさえ自覚のない方法で……
「……はああ〜、」
あたしは深く息を吐く。
弱った体に、右手に、もうしるしは浮かんでいない。
これしか方法がないのだ。
二人を助けるにはこれしか——
「……とおる、 ……かおる、」
目の前の二人を見つめながら、あたしは口を動かした。
「……ごめん。あたしがもっと早く気付いてたら……」
「「————」」
「……苦しかったよね。あたしなんかよりずっとずっと。
だってあたしには分かるから。操られてたって二人の心が……
あたしのせいで本当はすごく辛いこと」
「「————」」
「これが、償いになるとは思ってない。でも、」
「「————」」
「……はぁ。 あたし、二人と友達になれて良かった。 一緒に遊んだり、勉強したり。分からない事、いっぱいいっぱい教えてもらった。
二人のおかげであたし、だから……
もう苦しまなくていいんだ。あたしの為に、そして、あいつらの復讐の為に……二人には、笑っていて欲しいから……」
最後ににこりと微笑んで、
あたしは一気に薬を流し込む。
「————っ!!」