SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「……やめてくれ、そんな話。 だいたい、親父の話はつじつまが合わねえ」
「なに?」
「幼かったから善悪が分からない? そんな訳ねえだろ。あいつは加齢停止能力者なんだぞ。よくもそんな作り話……」
「そうだよ、幼かったとかある訳ないじゃない。あの人はずっと15才でもう善悪の分別くらい……」
「悪いのは美空を誘拐した組織の連中だっ! 加齢停止能力が働いたのも4年前でそれまでは普通にっ……
俺はどうしても責める気になれないっ! 美空の受けた苦しみを思うと想像するに余りあるっ!
……人体実験されたんだぞっ! 美空は組織にっ! ESPはそれのせいで身についたものだっ!」
「……は……?」
「……人体、実験……」
「いいかっ! もう一度言うっ! 美空は被害者だっ! 俺は事ある毎にゾッとする……あの時、もし薫が組織に連れ去られていたらと……!
薫を標的にしたのは美空と一緒だったからだ! 霊感があったからなんだ!」
「「……⁉︎」」
「もとより霊感の強かった美空は人体実験でそれを劇的に変化させた! 組織はそれを知っていたからこそ、同じく霊感の強い薫に目を付けたんだ!」
「「……っ、」」
「運が悪ければ薫もそうなっていたかもしれないんだぞっ……美空と同じように監禁され、人体実験され、そして——」
そこで一ノ瀬が異変に気付く。
二人の目から涙が溢れて零れている……