SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「……嘘だ……あいつは人殺しで……」
「……憎い……あいつが殺したの……」


なにか言葉と態度が一致しない。

怒り、憎しみの表情から、それを否定するかのように首を振り、時折辛そうに顔を歪めている。


「……おい」


一ノ瀬は眉根を寄せて二人を見る。


「……許さねえ、オレが仇を……信じてたんだ……」

「……あたしが……殺す……友達なの……」


「おい! どうしたんだ!」


「……分かってた……何か事情が……あるんだろうって……」

「……確かめに……聞きに行ったのに……」


「……っ、」


コロコロ感情が入れ替わり、何が本当の言葉か分からない。

すると、


「指揮官」


声が聞こえ、一ノ瀬は振り向く。

そこには栗色の髪をした、まだあどけなさの残る少年がこっちを見据えて立っていた。
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