SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

「……新、」


新(あらた)と呼ばれたこの少年は一樹の後輩であり、一樹がドイツへ渡った今、D.S.P唯一のテレパスとして活躍している。

新はいぶかしげに側までやって来ると神妙な口調で切り出した。


「記憶操作されていますね、二人とも」


「なに⁉︎」


「自我で必死に抑え込もうとしていますが、それでも術者の力は封じ込めず、葛藤しているのでしょう……」


言いながら新は二人の額に触れる。


「「————」」


途端に二人は身動き一つしなくなった。

探るように新は再び手を触れる……


「……っ、これはっ……術者はかなりの腕の能力者です。たぶん、一樹さんと同レベルの……」


「どういう事だ! 誰が何の目的で!」


「……Blue doll……」


「……!」


その言葉に一ノ瀬の顔が凍りついた。



「……どうやら、組織は壊滅してはいなかったようです。 全ては天使美空への報復の為、そしてD.S.Pの情報を得る為、二人は利用されたようです。

今現在起きている一連の事件は、全てこのBlue dollによるものでしょう……」


「……なん、だと……! Blue dollだとっ! 奴等がっ……!」


声を荒げた一ノ瀬の肩が震えている。


「……とにかく、今はこれを解かないと。二人がとても辛そうで……

と言っても、解いた所で耐えられるかどうかは分かりませんが……」


意味深な言葉の後、新は術を解き始める。

すると、次第に変化が表れた……
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