SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


「何か事情があるはずだっ!」
「行こう! 美空さんの所に!」


まるで何かのシーンの続きのように二人は慌てた素振りをみせる。

……と、


「……あ、れ……」
「……あたしたち……」


思い出したのか、みるみる顔が青ざめてゆく……


「……美空? ……オレ……」
「……美空さん、 あたし……」


「……は? ……嘘、だろ?」
「……そんな、 ……待って……」


ガクガクと二人が震えだす。


「……殴った……? ……オレが? ……美空を?」


「……う、そ……あたし、美空さんに人殺しって……殴った、の……?」



「……っ! オレ、オレがっ……オレが美空を殴って! 殺そうと首をっ……首を絞めてっ! それからっ……それからっ……!」


「……毒をっ……毒を呑ませてっ……!」


「……うわああああっ……!」
「……いやああああっ……!」


頭を抱え二人は激しく絶叫する。


「おいっ! 透っ! 薫っ!」


「ああああっ……ああああっ……!」
「うわあああっ……うわあああっ!」


狂ったように泣き叫ぶ様子に、一ノ瀬は躊躇しながらも新にそっと耳打ちする。


「二人から美空の記憶を消してくれ」
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