SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「なんでっ……なんでみくが行かなきゃいけないんだ……!」
「……え、」
「もう十分だろ……みくはよく頑張った……だからこれ以上……」
「……ゆう……」
「またあんなっ……! オレはもうみくが傷付くのを見たくないっ!」
寒々しい廊下に湧人の声がよく響く。
強く向けられた瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。
「…………」
あたしはその目をじっと見る。
二人の間の無言の空気が更に冷えて尖ってくる……
「あたしが行かないとだめなんだ」
沈黙の後、あたしは思いを口にした。
「Blue dollはあたしの一番の敵なんだ。だからあたしが終わらせる」
「……っ、だから何でっ! 行けば只じゃ済まないんだよ! 殺されるかもしれないんだよ! なのにっ……!」
「それがあたしの役目なんだ」
「役目ってそんなっ……おかしいだろっ! 重すぎるよっ! みくだけそんなっ……」
「あたしだからだ」
「……えっ……」
「あたしだからの役目なんだ。あたしは今まで何度も何度も死にかけた。それでも生きていられたのは、いろんな人の助けや思いがあったからだ。
あたしが一人で生きてるんじゃない、あたしはみんなに生かされてる。
だから救われた命で今度はみんなを助けたい。それが役目だというなら、なおさら……」
「……っ、でもっ、」
「それに、さっきの湧人とあたしも同じだ」
「……え?」