SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「あたしも見たくない、これ以上みんなが傷付くのを。守りたいんだ、あたしがみんなを守りたい」
「……みく……」
「大丈夫。あたし絶対負けないから。 だってあたしは一人じゃない。 しるしや、お父さんお母さん、湧人やみんなもいてくれる。 いっぱい力もらってる、だからあたしは大丈夫」
「……っ、」
湧人は唇を噛み締める。
うつむいて、堪えるようにギュッと瞳を閉じている。
そして、
「……分かった……」
湧人は静かに頷いた。
「でも約束して。 必ず無事に帰ってくるって……絶対生きて帰ってくるって……」
「……湧人……」
「約束して。 また、すぐに会えるって……」
それはとても儚く切ない顔……
銀の瞳だけが力強くまっすぐあたしを見つめてる……
「……分かった。 約束する。 必ず無事に帰ってくる。 絶対生きて帰ってくる。 すぐに湧人に会いに行く」
そう言うと、ほんの少しだけ湧人は微笑む。
「……じゃあ、 行ってらっしゃい……」
今度はそっと背中を押してくれた。
「うん。 じゃあ、行ってくる」
あたしは再び走り出す。
地上へと続く階段を、覚悟を決めて駆け上がった——。