SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし


黒木はポケットからタバコを取り出すと、一本口にくわえ、ライターで火をつけた。


……あ。

今、あたしと同じ年ぐらいの女の子の顔がみえた。


「…………」


あたしは分かってしまった。
黒木が今、誰を思い出しているのかを……


「……いもうと 」


あたしの言葉に、黒木がハッとする。

そして、観念したように、ハア~っとタバコの煙を吐き出した。


「 ははっ、おまえもナカナカ、あなどれね~なあ。 あいつは、麻里は……おまえに似て、強い妹だったよ…… 」


黒木は体をダランと崩して空を見上げた。
< 74 / 795 >

この作品をシェア

pagetop