SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
黒木は妹を交通事故で亡くしている。
即死だったため、黒木でもどうしようもなかったそうだ。
「 初めて美空を見た時、傷だらけの……あの姿がさ、あいつと重なって見えた。 おまけに名前が同じ“まり”って、しかも15才って……。 カラダん中、かきむしられる思いだったよ 」
“明るいお調子者” という仮面が外れて、むきだしになった感情が次々とあたしに突き刺さる。
黒木は自分をひどく責めていた……
そう。黒木はあたしと、亡くなった妹を重ねて見ていたのだ。
あたしを放っておけない理由はそこにあった。
「 情けねえ話だよなあ。オレ、ヒーラーなのによお、一番大切なモン守れなかった。 麻里を……助けてやれなかった 」
——オレのせいで妹は死んだ。
そんな心の声が聞こえてくる。
"シャアアア……"
噴水の音が大きくなって、首筋に水しぶきが飛んだ気がした。
背中の上の方がゾクッとなって、急激に体が重くなる。
……ああ、これは……
……この……感覚は……
あたしはガクッと頭を下げた。