SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
すると、麻里はオレを見据えてこう言った。
『 お兄ちゃんは、人が生きるのも死ぬのも、全部自分次第だって思ってるわけ⁉︎ なによ! たかだか人間の分際で! ……そりゃあ、お兄ちゃんはヒーラーで、普通の人とは違うかもしれない。 でも、だからって自分は神様だ、とでも思ってるわけ⁉︎ だったら勘違いも甚だしいわ! 傲慢よ! 見ているこっちが恥ずかしい!』
「 ちょ、麻里、なにもそこまで…… 」
オレは呆気にとられる。
『 いい? よく聞いて 』
麻里の声がワントーン低くなった。
『 私が死んだのは私のせいです! 誰のせいでもあ、り、ま、せ、んっ!』
睨むようにオレを見据えて麻里はきっぱり言いきった。
「……ま、り…… 」
『 私、そんな風に自分を責めてるお兄ちゃん見たくないよ。 もう! 私の方が泣いちゃうんだから!』
「……え? 」
『だってそうでしょ、お兄ちゃんはいつも私に優しかった。守ってくれた。助けてくれた。いっぱい笑わせてくれた。 なのに、私はお兄ちゃんに何もしてあげられなかったんだよ! 勝手に死んで、死んでからしばらく経つのに、いまだにお兄ちゃんを苦しめてる……。 なんてひどい妹だろうって…… 』
「そんなっ! おまえはひどい妹なんかじゃない! オレの、オレの自慢の妹だったんだ!」
『 だったら!』
「……⁉︎」
『……だったら、もう自分を責めないで?』
麻里のまっすぐな瞳がオレを捉える。