SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
突然の声に閉じかけていた瞼を開く。すると、
"キュインッ!"
何かが目の前を横切った。
……な、に……?
……黒い、光の、玉……?
"パァァァ……、パアアアンッ……"
手のひらぐらいの大きさのそれは不規則に蛇行し、波うつように光の強弱を繰り返していた。
『 力が、欲しいんだろ?』
……やっぱり声が聞こえる。
どうやらこの黒い玉が喋っているようだ。
男たちには見えていないのだろうか。
白衣の男は平然とした様子で注射器をピンと弾いている。
『 時間がない! オレを信じろ! オレに心を預けるんだ!』