SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

◇しるしがあたしを導く時

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「……ヒク、グエ、グスッ…… 」


……あ~、一体どうしたことだ。

黒木が泣いている。あたしにしがみついて……


「……黒木。どうしたの?」


"ガア~、ガア~ッ!"


……もう、夕方か。

辺りがオレンジ色に染められて、遠くでカラスが鳴いている。


「……黒木?」


「……グスッ、みく、か?」


しわがれた声を出し、黒木はあたしを離した。


……なんてひどい顔。

涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだ。

でも、なにがあったのかは、黒木の様子を見れば何となく分かってしまった。


……あれ、か。


あたしはごくたまに、こんな状態になる時がある。

自分じゃない誰かが体に入り込んで、自分の意思とは関係なく、喋ったり動いたりするのだ。

まあ、憑依って、やつ。


「……いもうと? 話した?」


すると黒木は口角を上げ、


「 まあ~な!」

ニッと微笑んだ。

だいぶ顔はむくんでるけど、そこには曇りのない、晴れやかな表情の黒木がいた。
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