SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 さあ~て、帰るかあ~ 」
顔をみがいて、黒木がスッと立ち上がる。
「 うん。黒木、かわいた。のど 」
「 オ~ウ♪ んじゃ~、どっか寄ってくかあ~?」
昼間とは違い、だいぶ風も冷たい。どこからか甘辛いにおいも漂ってきた。
あたしは歩き出す黒木の背中を追いかける。
ところが、
——!
なにか違和感を感じて足を止めた。
「……⁉︎」
ジワ~ッと熱を帯び、うずく右の手のひら。
「……え、」
……なに、これ……
そこには、“五” の字に似た、赤いアザのようなものが浮かび上がっている。