SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

そもそもこの女と再婚したのが間違いだった。

こんな、裏でヤクザと繋がっていたような女と……


「グハッ!」

また拳が飛んできて男の体は前のめりになる。


「 安心して? 会社は私が何とかするわ。あなたは何も心配しないで死んでくれればいいの。大好きな息子と一緒にね 」


きゃはははと、また高笑いする女。

そう、これは始めから画策されていた事だった。

女がこの男と結婚した目的はただ一つ、

男の莫大な資産を自分のものにする事だったのだ。


——キッ

高速を下りた車はひと気のない、漁港に停められた。


——ドシャ!


乱暴に車から降ろされ、男は水の溜まった所に投げられる。

大柄でいかついヤクザたちがナイフや木刀を持って男に近づく。

さらに拷問するつもりなのだろう、

簡単には殺さない、じわじわとなぶり殺すのが彼らのやり口だった。
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