SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「…………」
「……大丈夫?」
美空は沈黙する男の縄をほどく。
男はコクンとうなづくと、突然ハッとした顔で駆け出した。
「大丈夫か!」
男は車の中の息子の安否を確認する。
息子は何ごともなかったように、すやすやと寝息を立てている。
「 はあ~、良かった。本当に良かった 」
男はヘナヘナと地面に崩れ落ちた。
「 天使さま、ありがとうございます。 わたしは……わたしはなんて愚かな男…… 」
男が泣き出す。
美空はすっかり“天使さま” になっていた。