SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし
「 あ~、」
美空はそんな男に近づくと、そっと体を抱きしめた。
「……え⁉︎ 天使さま?」
甘いフローラルの香りが男の鼻をかすめる。
その優しい香りが、不思議と男の気持ちを鎮めていった。
"ファアアア……"
何故それが出来たか分からない。
美空が体を離すと、男が負っていた傷が全てふさがっていた。
「……こ、これはっ!」
男は目を丸くする。
「じゃあ、行く 」
「……え?」
美空は再び意識を集中させると、“シュン!” と姿を消してしまった。
もうすっかり夜の漁港……
男はしばらくその場を動けずにいた……
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